沖縄美ら海水族館では、沖縄周辺にみられる熱帯・亜熱帯性の海洋生物の多様性研究や、生理学・生態学的特性を研究することにより、自然環境の保全と持続可能な利用に寄与する活動を行っています。
サンゴ礁を支えるイシサンゴの仲間は、気候変動や人間活動により危機的な状況にあり、今後の保護には各地域での現状把握が必要です。これまでのサンゴ調査では、専門技術を要するダイバーや水中映像技術を要してきましたが、効率や制度の面でその有効範囲には限界がありました。
一方で環境DNAメタバーコーディング(eDNA-M)は、サンゴの存在を検出するための有効な方法ですが、PCRで増幅するための最適化されたプライマーと、解析に必要な完全なゲノム情報が不足していました。日本のサンゴ礁に生息する85属のイシサンゴの仲間のうち、不足していた22のサンゴ属のミトコンドリアゲノムをシーケンシングし、さらに12属の種も再シーケンシングをしました。
美ら島財団ではこのうちの7属の新データの取得に貢献しました。これらのデータを用いて新たなeDNA-Mシステムを構築し、85属中83属を検出できるようにしました。これにより、日本の海域でイシサンゴの仲間の属レベルでの包括的な検出がコップ一杯の水で可能になりました。本研究は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のマリンゲノミックスユニット(佐藤矩行教授)を中心とする研究チームに協力する形で行われました。
【著者名】
Kanako Hisata, Tomofumi Nagata, Megumi Kanai, Frederic Sinniger, Fumihiko Nagata,
Mayuki Suwa1,Yuki Yoshioka1, Saki Harii, Masanori Nonaka, Hironobu Fukami, Seiji Arakaki,
Manabu Fujie, Nana Arakaki, Yuna Zayasu1, Haruhi Narisoko, Takeshi Noda1, Aya Koseki,
Koki Nishitsuji1, Jun Inoue, Chuya Shinzato, and Noriyuki Satoh
(太字:財団職員)
【論文題名】 An eDNA metabarcoding system for detecting scleractinian corals to the generic level along the Japanese coast
【雑誌名】Galaxea, Journal of Coral Reef Studies
【掲載日】2025年5月22日
【論文リンク】
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2025/5/22/discovering-rich-biodiversity-coral-reefs-using-comprehensive-new-system
ハタゴイソギンチャクを含む宿主イソギンチャクはクマノミ類と共に観賞用として需要が高く,捕獲による生息密度の減少が指摘されています。クマノミ類の繁殖技術が1970~1980年代に確立されている一方で,宿主イソギンチャクの繁殖技術は確立されておらず,繁殖生態に関する知見も極めて少ない状況でした。
沖縄美ら海水族館ではハタゴイソギンチャクの保全を目的として、2019~2022年に繁殖技術の開発と繁殖生態の解明について研究を行ってきました。穿刺針を用いて雌雄を判別し、屋外に設置した水槽で雌雄混合飼育を行ったところ,受精卵の採取と繁殖行動の撮影に成功しました。本種の繁殖は6~7月(水温26.1~27.2℃),満月の6~9日後に行われ,日没約1時間前に放精,日没後に産卵することが明らかとなりました。
また,同様の方法で2023年にシライトイソギンチャク,2024年にアラビアハタゴイソギンチャクの飼育下繁殖に成功しており,本技術が宿主イソギンチャク類の生息域外保全に貢献するものと期待しています。
【受賞者】松﨑章平、鈴村真由、谷本 都、小俣万里子、中嶋愛理、村雲清美(沖縄美ら海水族館)
【題 目】原著論文「ハタゴイソギンチャクの雌雄判別方法および飼育下繁殖」
【掲載誌】動物園水族館雑誌66巻3号,57-66,2024.
1個体のクロウミガメから排出された人工物(下線部の長さは50 mm)
海洋に流出した人工物は,多くの海洋動物に影響を与え,世界的な問題となっています。ウミガメ類における人工物の摂食は、生存や成長に悪影響があることが示されており、沖縄島近海の状況を明らかにすることは,ウミガメの保全活動を行う上で重要です。
1999年から2023年にかけて沖縄島近海で発見された5個体のクロウミガメを対象に、西部太平洋地域で初めてとなる人工物摂食状況の調査を行いました。生きた状態で発見された3個体は沖縄美ら海水族館で飼育し、2〜72日後に軟質プラスチックやその他の人工物を排出しました。残りの2個体は死亡漂着個体であり、解剖により消化管内容物を調査した結果、1個体からのみ人工物が検出されました。全体としては5個体中4個体(80%)で人工物の摂食が確認され、同海域に生息する他種のウミガメと比べて高い割合であることが明らかとなりました。
本研究から、沖縄島近海のクロウミガメは人工物の摂食率が高く,その人工物が長期にわたり消化管内に滞留することで健康状態が悪化することが懸念されました。そのため、沖縄島周辺で発見されたクロウミガメに対しては積極的な緊急保護を行い、薬剤や内視鏡を用いた速やかな人工物除去が必要であると考えられました。
【著者名】笹井隆秀・山崎啓・真栄田賢・水落夏帆・木野将克・河津勲(すべて財団職員)
【論文題名】沖縄島近海のクロウミガメChelonia agassiziiにおける人工物の摂食状況
【雑誌名】うみがめニュースレター
詳しくはコチラ(論文リンク)
ジンベエザメ
ジンベエザメ (Rhincodon typus) は成長や成熟に長い時間を要するため、繁殖や保全に関する研究には長期的な観察が不可欠です。そのため、環境要因が行動に与える影響を理解し、適切な飼育管理を行うことは重要です。本研究では、沖縄美ら海水族館で29年以上飼育されている雄のジンベエザメにデータロガーを装着し、水温や光が遊泳行動に与える影響を調べました。
遊泳データの結果から、すべての季節において尾鰭振動数、遊泳速度、活動レベルは夜間に日中よりも4%~20%低下し、特に水温が23.6℃以下の低温時には、夜間の活動が約20%減少する傾向がありました。また、一般的に雄のサメに見られる繁殖行動の一つ「クラスパークロス(生殖器を交差させる行動)」の約90%が日中に確認されました。
これらの結果から、ジンベエザメは日中に活発に行動する一方、夜は尾鰭の振りを遅くしてエネルギーを節約しながら休息する昼行性のリズムをもち、現在の飼育環境に適応していると考えられます。
本研究の成果は、ジンベエザメの行動特性の理解を深め、今後の飼育管理や保全活動に役立つと期待されます。
著者名:
Tomoki Kanna, Sayaka Takahashi, Eundeok Byun , Atsushi Yamashiro , Rui Matsumoto , Shinsuke Torisawa , Yasushi Mitsunaga (太字:財団職員)
論文題名:
Seasonal behavioral changes of a captive whale shark (Rhincodon typus) under variable temperature and light conditions
雑誌名: Fishery Bulletin
タイマイ
セレンは海洋環境に自然に存在する微量元素です。卵生(卵を産む)動物では、血中のセレン濃度が低下すると、孵化率の低下リスクがあることが知られています。本研究では、絶滅危惧種であるタイマイ(Eretmochelys imbricata)の野生個体と飼育個体45頭の血清セレン濃度を比較し、飼育期間中の血清セレン濃度の変化をモニタリングしました。その結果、野生のタイマイは飼育個体に比べて血清セレン濃度が有意に高いことが明らかになりました。この低下は特に飼育開始後1~2年の間に顕著に見られ、飼育下での孵化率の低下につながる可能性があることを示唆しています。
沖縄美ら海水族館を運営する沖縄美ら島財団は、今後も保全研究を推進し、この課題の解決に向けた取り組みを進めていきます。
著者名:
Kino Masakatsu, Isao Kawazu, Konomi Maeda (全員財団職員)
論文題名:
Relationship between Serum Selenium Concentration and Rearing Period in Hawksbill Turtles
雑誌名: Current Herpetology
エラブウミヘビの肺に寄生する吸虫Pulmovermis cyanovitellosusは、1960年に台湾で発見され、その後日本や韓国でも記録されてきました。特異な生態をしているウミヘビを宿主としている本種は、これまで特異なグループに分類されていましたが、遺伝子配列に基づく分子系統学的研究と形態学的研究の結果、実は別のグループ(Lecithochirium属)に属することが明らかになりました。この発見により、本種は新たにLecithochirium cyanovitellosumとして分類群を統合することが提案されました。
Lecithochirium cyanovitellosumの全身(左側面)
クサビライシ科Fungiidaeは、キノコのようなユニークな生活様式や形態でよく知られているイシサンゴの仲間ですが、生物の分類をする際に用いられるミトコンドリアの遺伝情報はこれまで完全にはわかっていませんでした。本研究では、水族館で飼育しているクサビライシ科4種類(Lithophyllon undulatum、 Pleuractis paumotensis、 Podabacia crustacea、 Sandalolitha robusta)と、サザナミサンゴ科Merulinidaeの1種類(Coelastrea aspera)のミトコンドリア全遺伝情報が解読されました。その結果、クサビライシ科4種、サザナミサンゴ科1種のサンゴは、他のサンゴと同じミトコンドリア遺伝子セットを持っており、ミトコンドリア全ゲノム情報から推定された系統関係は、過去の部分的な遺伝子情報を使った研究と同一であることが確認されました。今回の正確かつ完全なミトコンドリアの遺伝子情報は、今後、サンゴの生態や進化の理解に役立つと考えられます。本研究は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のマリンゲノミックスユニット(佐藤矩行教授)を中心とする研究チームに協力する形で行われました。
【著者名】
Yuki Yoshioka, Fumihiko Nagata, Masanori Nonaka, and Noriyuki Satoh
(太字:財団職員)
【論文題名】
Molecular phylogenetic position of the family Fungiidae (Cnidaria:
Anthozoa) based on complete mitochondrial genome sequences
【雑誌名】Galaxea, Journal of Coral Reef Studies
【掲載日】2024年11月2日
【論文リンク】
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/galaxea/26/1/_contents/-char/en
調査対象となったミヤコトカゲ
調査対象となったミヤコカナヘビ
琉球列島の島々において、人為的に移入されたニホンイタチ(Mustela itatsi) は、在来の陸生脊椎動物に大きな悪影響を与えてきました。本研究では、絶滅危惧種に指定されている3種のトカゲ、キシノウエトカゲ(Plestiodon kishinouyei)、ミヤコカナヘビ(Takydromus toyamai)、およびミヤコトカゲ (Emoia atrocostata) の下地島と伊良部島における生息状況を評価することを目的としました。調査は2022年7月30日から8月4日、および10月8日から13日の期間に、両島の各地でラインセンサス法を用いて実施しました。
その結果、キシノウエトカゲは101地点中4地点のみ、ミヤコカナヘビは76地点中6地点のみ、ミヤコトカゲは39地点中2地点のみで確認されました。特に、キシノウエトカゲとミヤコトカゲは非常に限られた分布を示し、前者は下地島の北西部、後者は南西部でのみ確認され、両種とも伊良部島では個体が確認されませんでした。ミヤコカナヘビは下地島と伊良部島の両方で観察されましたが、伊良部島では出現頻度が低く、個体数減少の可能性が示唆されました。
本研究の結果は、これら3種のトカゲの生息状況に関する基礎データを提供するものであり、ニホンイタチの駆除プロジェクト後に期待される、将来的なトカゲ類の個体群回復を評価するための重要な資料となります。
著者名:
Hitomi Asato, Takahide Sasai, Takumi Yamamoto, Mamoru Toda (太字:財団職員)
論文題名:
Population status of three endangered lizards on Shimojijima Island and Irabujima Island, Ryukyu Archipelago, Japan
雑誌名: Current Herpetology
論文リンク: https://doi.org/10.5358/hsj.43.159
放流の様子
放流されたアカウミガメ
沖縄美ら海水族館で飼育した生後約3ヶ月のアカウミガメ12匹に、電子標識を装着し放流しました。これは孵化した仔ガメがどのように海洋を回遊し成長しているのか、ウミガメ研究における最大の謎のひとつを解明することを目的としています。特に生存率の低い仔ガメの生態の解明は、絶滅危惧種であるアカウミガメの保全に貢献する重要な研究です。この調査は沖縄美ら海水族館を管理運営する「沖縄美ら島財団」と「NPO法人Upwell」「NPO法人Sea Turtle Ecology Lab」との包括連携協定に基づき、研究者によって行われています。今後も科学的な調査を通じて、絶滅危惧種の保全に寄与出来るよう研究を進めてまいります。
今回、新たに作成した「小型」人工子宮装置の全容
育成中の深海ザメ(ヒレタカフジクジラ)の胎仔
沖縄美ら海水族館では、2017年より早産胎仔の救命を目的としたサメの人工子宮装置の開発を進めてきました。今回、設計の大幅な見直しによりサイズを過去の装置の20分の1まで小型化することに成功しました。この改良により、これまで人力での移動が難しかったサメの人工子宮が船舶や自動車などに積載可能になりました。この技術は、水族館から遠く離れた場所で回収した早産胎仔を安全に搬送する技術の確立に寄与すると考えられます。
【著者名】
冨田武照、金子篤史、戸田実、諸田大海、村雲清美、佐藤圭一 (一般財団法人沖縄美ら島財団)
【論文題名】
Portable-size artificial uterine system for viviparous shark embryos (胎生サメ類のための、小型人工子宮装置の開発)
【雑誌名】MethodsX
【掲載日】2024年11月17日(電子版)
【論文リンク】https://doi.org/10.1016/j.mex.2024.103063
沖縄美ら海水族館のオキゴンドウと調査実施の様子①
沖縄美ら海水族館のオキゴンドウと調査実施の様子②
沖縄美ら海水族館では、オキゴンドウやミナミハンドウイルカ、シワハイルカなどのハクジラ類を数種類飼育しており、野生個体の保全に必要な情報の収集や生態を理解するため、飼育下での調査研究の実施にも力を入れています。
現在は、ハワイの研究機関等とも協力してオキゴンドウの調査研究を実施しています。実は、ハワイの一部海域に生息するオキゴンドウの個体群は、現在絶滅危惧に指定されており、135頭程しか確認されていません。そこで、この個体群の保全を計画するため、現地では、ドローンを使った体長、身幅の推定による健康状態の把握や、漁具による混獲防止対策などの調査研究の実施が急がれています。
沖縄美ら海水族館では、ハワイのオキゴンドウ研究チームと協力し、水族館でオキゴンドウの正確な体長、身幅を計測し、その後ドローンを使って、同じ個体の体長を測定することで、ドローンによる体長測定の実測値との誤差を把握し、野生個体のデータ補正に必要な情報を収集しています。また、血液や呼気を利用して、オキゴンドウの代謝率等を測定する調査も開始しています。
このように、野生下では収集が難しいデータや行動観察を飼育下の個体を対象に収集することで、野生下の個体の保全に役立てることを目指し、今後も国内外の研究者と協力して飼育下での調査研究にも力を入れていきたいと考えています。
ジンベエザメ(Rhincodon typus)は、北極海と南極海を除くすべての海洋に生息し、世界中のさまざまな場所で観察されています。これらの出現は通常、豊富な餌の存在と深く関連していることが分かっています。しかし、ガラパゴス諸島最北端のダーウィン島では、ジンベエザメの出現が6~10月に集中しており、ここでは餌の増加とは明らかに関連していません。さらに、ガラパゴス諸島で観察されるジンベエザメの大部分は全長10mを超える巨大な雌であり、この大きさと性別の偏りはガラパゴス諸島特有のものです。これらの中には腹部が大きく盛り上がっている個体も多く観察されており、妊娠の可能性が示唆されています。このため、ガラパゴス諸島はジンベエザメの繁殖生態を解明するうえで非常に重要な海域として、世界中の研究者に注目されています。
沖縄美ら島財団では、2017年から、ジンベエザメの生態を科学的に理解し、保全に向けた取り組みを目的とした国際的な調査団体「Galapagos Whale Shark Project」に参加しています。当財団は、沖縄美ら海水族館におけるジンベエザメの健康管理で培った水中での超音波画像診断(エコー)や採血技術を通じて、本種の繁殖生理の解明を支援しています。今年6月に実施された調査では、全長10~13mの12個体のジンベエザメと遭遇し、6個体から超音波画像を、5個体から血液サンプルを取得することに成功しました。採取した血液サンプルは、CITES(ワシントン条約)による輸出入許可が下りるまで、サンフランシスコ・キト大学(エクアドル)で凍結保管されています。今後、当研究室にて血液分析やホルモン分析を行い、水中エコー画像と血液サンプルから得られる生理状態を統合することで、これまでほとんど知られていなかった繁殖生理に関する知見を深める研究を進めています。今後も本プロジェクトに協力し、国内外の研究機関とともに、ジンベエザメの保全に寄与する科学的知見の拡大に貢献してまいります。
これまでの研究成果: 野生ジンベエザメの生態研究に関する論文が掲載されました | 一般財団法人 沖縄美ら島財団 (churashima.okinawa)
調査船
潜水直前の様子
水中エコーの様子
水中採血の様子
ザトウクジラは、個体ごとに尾びれの模様や形状が異なり、この特徴を用いて個体を識別することができます。本研究では、2002~ 2021年に、沖縄を含む日本、フィリピン、ハワイ、メキシコ、アメリカ、ロシア等、多くの国や地域で収集された計19万枚以上の尾びれ識別写真を用いて、個体数推定を行いました。
その結果、北太平洋のザトウクジラは、2002~ 2012年にかけて16,875頭から33,488頭まで増加し、その後、2012~ 2021年にかけては、26,662頭程まで減少していたことがわかりました。特にハワイ周辺で繁殖来遊する集団については、2013年をピークに徐々に減少し、2021年には34%程も個体数が減少していたことが新たに確認されました。
これらの結果は、北太平洋全体でザトウクジラの資源量が環境収容能力に達した可能性を示唆するとともに、2014年から2016年にかけて発生した世界最大規模の海洋熱波および気候変動が、その資源状態や回復傾向に長期的な影響を与えている可能性を示しました。今後も北太平洋全体で協力して調査研究を継続することで、ザトウクジラの正確な資源状態の動向や気候変動の影響についての把握を目指します。
【著者名】Ted Cheeseman, Jay Barlow, …, Nozomi Kobayashi, …, Haruna Okabe …, Phil Clapham (他69名)
【論文題名】Bellwethers of change: population modelling of North Pacific humpback whales from 2002 through 2021 reveals shift from recovery to climate response
【雑誌名】Royal Society Open Science
【論文リンク】https://doi.org/10.1098/rsos.231462
米国ハワイ州マウイ島で実施されたザトウクジラの調査研究に関連した教育イベント「Whale Tales」にて、当財団の職員が、沖縄を含む日本のザトウクジラの調査研究や取組みに関する講演を実施しました。
ハワイ州で長年にわたって鯨類の調査研究を実施する研究機関「Whale Trust」が主催する第17回Whale Talesには、ハワイ州内外から約800名の人々が参加し、世界各国(ハワイ、メキシコ、フィリピン、ニカラグア、日本)の研究者が、それぞれの国で実施されている鯨類調査やホエールウォッチング産業について、招待講演を行いました。当財団も、沖縄や日本におけるザトウクジラに関する取り組みについて講演し、パネルディスカッションに参加しました。
また、イベントの一環で、ホエールウォッチングツアーに研究者として乗船し、一般参加者からの質問、解説対応などを行いました。 また、イベント参加後は、ハワイ州でザトウクジラの調査研究を実施するKeiki Kohora ProjectやPacific Whale Foundationとの共同調査にも参加し、今後の北太平洋全域を対象としたザトウクジラの保全に向けて連携を深めました。
「Whale Tales」での講演、パネルディスカッションやホエールウォッチング参加時の様子
現地でのザトウクジラ調査に参加した際の様子
ブリーチするザトウクジラ
調査を実施する様子
近年、沖縄や奄美周辺海域では、冬の観光産業として、ザトウクジラを対象としたホエールウォッチングやホエールスイムツアー産業が盛んに行われています。その一方で、ツアーの対象種であるザトウクジラへの影響も懸念されています。そこで、当財団では2022年から、沖縄県内の関連事業者の方々やハワイの研究組織Pacific Whale Foundation(PWF)と共同で、「ホエールウォッチング・スイムツアーによる影響評価調査」を開始しました。
2022~2023年の冬季に実施した調査では、計64群のザトウクジラを対象に、ホエールスイムツアー15回、ホエールウォッチングツアー12回分の調査データを収集することができました。さらに、この研究の実施について、国際捕鯨委員会(IWC)のホエールウォッチング分科会で報告しました。
今後、同調査結果の解析を進めるとともに、ザトウクジラと人がより良い形で共存できる環境や産業の形を目指しつつ、沖縄県内の観光産業の発展に寄与していきたいと考えています。
【著者名】
Stephanie H. Stack, Nozomi Kobayashi, Haruna Okabe, Sachie Ozawa
【題名】
Studying the behavioral impacts of commercial whale watch and swim-with-whale tours on humpback whales in Okinawa, Japan.
【報告先】
Report to the IWC Scientific Committee sub-committee on Whale Watching
ブリーチするザトウクジラ
調査で尾びれ写真を撮影する様子
ザトウクジラは、個体ごとに尾びれの模様や形状が異なり、この特徴を用いて個体識別をすることができます。本研究では、世界初の規模となる、北太平洋全域を対象としたザトウクジラの尾びれ識別写真の大規模なデータセットの構築および尾びれ照合システムの開発と利用に関する成果を論文にまとめ発表しました。
本研究では、ザトウクジラが来遊する計13海域(繁殖海域6、摂餌海域6、回遊途中海域1)において、39の研究組織と市民科学者によって収集された識別写真が用いられました。これらの識別写真を、AI自動画像認識システムを用いて、照合、集約することで、世界初の規模となるザトウクジラ識別写真のデータセットを構築しました。同システムでは、2001~ 2021年の間で計157,350件、27,956個体分の識別写真が収集されました。また、識別写真の照合の結果、北太平洋では、全個体の約87%の個体が複数年にわたって何度も確認されており、その平均観察回数が5.6回であることが示されました。
本研究で構築された、大規模なデータセットとAI自動画像認識システムは、国や地域を超えて大回遊を行うザトウクジラの生態把握や保全計画に必要不可欠な情報を把握する上で、今後大変重要な技術と情報源となることが期待されます。
【著者名】
Ted Cheeseman, Ken Southerland, …, Nozomi Kobayashi, …, Haruna Okabe, …, Phil Clapham(他64名)
【論文題名】
A collaborative and near‑comprehensive North Pacific humpback whale photo‑ID dataset
【雑誌名】
Scientific Reports
【論文リンク】
https://rdcu.be/dVXjl
発表の様子1
発表の様子2
2024年8月5日から9日にかけてマレーシアのサラワク州クチンにて行われた、国際爬虫類両棲類学会にて、当財団の職員が研究成果の発表を行いました。
国際爬虫類両棲類学会は、世界最大の爬虫類・両棲類に関する国際学会で4年に一度の開催です。世界各国から約1400名の人々が参加し、様々な研究発表が行われた他、参加者各々の専門性に合わせて多様なシンポジウムが開催されました。当財団も、飼育下ならではのウミヘビの採餌に関する研究とトカゲの保全に関する研究を発表しました。また、今後の研究や保全活動に向けて世界の研究者と意見交換を行いました。
【参加学会】
第10回国際爬虫類両棲類学会
【発表タイトル】
1.How sea snakes find and identify their prey in water ウミヘビはどのようにして水中で獲物を見つけて識別するのか(発表者:笹井隆秀、シンポジウムタイトル:The diversity and evolution of snake sensory systems ヘビの感覚器官の多様性と進化)
2.Age Structure and Growth Pattern of the Kishinoue's Giant Skink, Plestiodon kishinouyei (Squamata: Scincidae), Inferred by Skeletochronology 骨年輪法によるキシノウエトカゲの年齢構成と成長パターンの推定(発表者:笹井隆秀)
シンポジウムでの発表の様子(岡本)
シンポジウムでの発表の様子(冨田)
2024年7月10日から14日にかけて米国ペンシルバニア州ピッツバーグにて行われた、国際シンポジウムにて、財団職員が研究成果発表を行いました。当財団が行ってきた板鰓類(サメ・エイ類)の保全研究について発信し、今後の研究に向けて世界の研究者と意見交換を行いました。
【参加学会】
JMIH2024(アメリカ板鰓類学会・両生爬虫類学会・魚類学会の合同大会)
【シンポジウムタイトル】
Contributions of Aquariums to Elasmobranch Research(水族館の板鰓類研究への貢献)
【発表タイトル】
1.Changes in sex steroid hormone levels and reproductive organs reflect the breeding status of zebra sharks in Okinawa Churaumi Aquarium
(沖縄美ら海水族館におけるトラフザメの繁殖状況を反映する性ステロイドホルモン値と生殖器官サイズの変化<発表者:岡本情)>)
2.Development of artificial uterus: A new conservation breeding technique for sharks
(サメの保全繁殖に向けた人工子宮装置の開発<発表者:冨田武照>)
2024年7月8日~10日の3日間、沖縄美ら島財団と沖縄美ら海水族館にて、第4回Asian Marine Mammal Stranding Network(アジア海凄哺乳類ストランディングネットワーク)ワークショップが開催されました。このワークショップは、特にアジアにおける海棲哺乳類の保全のため、ストランディング(漂着や迷入)発生時の対処方法、組織間の技術共有と連携強化を目的として、これまでにフィリピン、タイ、台湾で開催されています。
日本初開催となる第4回大会は、AMMSN事務局、当財団の共同主催で開催され、各国の事例紹介、獣医師による治療実演、ストランディング発生時の対応実地研修、コブハクジラの解剖実習等が3日間に亘って行われました。タイ、フィリピン、香港、シンガポール、アブダビ、スコットランド、日本から、獣医師、研究者、水族館トレーナー、学生等、約70名の参加者が集い、ワークショップを通じて、互いの連携を深めながら、大変活発に各国間の技術交換や情報共有が行われました。今回生まれた新たな連携や協力関係を基に、今後アジアを含む世界の海洋生態系保全に寄与することが期待できる、非常に有意義なワークショップとなりました。
全体集合写真
コブハクジラの解剖実習
獣医師による治療実演研修
各国からの事例・活動報告紹介講演
ビーチでの事案発生時の対処研修
水族館での懇親会とエイサー演舞
沖縄美ら海水族館は、アメリカのジョージア水族館およびシェッド水族館と共同で、希少種であるシノノメサカタザメの保全研究を開始しました。
シノノメサカタザメとは?
シノノメサカタザメは、一見サメのように見える特徴的な形態をしたエイの一種です(下写真参照)。本種は国際自然保護連合(IUCN)レッドリストで「深刻な絶滅危機:Critically Endangered)に指定されており、乱獲や生息地の環境悪化により個体数の急激な減少が懸念されています。
誕生から現在までの歩み
沖縄美ら海水族館では2023年10月、全長約40cmの10匹のシノノメサカタザメの赤ちゃんが誕生しました※1。その後、2024年11月には全長1.1mを超えるまでに健康に成長しました。この成果は、当館が有する専門的な飼育技術と環境整備、徹底した健康管理の積み重ねによるものです。
放流の様子
放流されたシノノメサカタザメ
野外と水族館での調査
将来の保全技術の確立を目指し、当館では生まれた個体の一部を沖縄本島周辺の海域に放流し、その行動をモニタリングする調査を実施しました(下写真参照)。放流個体には電子標識を装着し、「遊泳水深」「環境水温」「移動範囲」などを確認します。これらのデータは、シノノメサカタザメの生態解明や将来の保全計画に役立てられる予定です。また、放流されなかった兄弟の個体については、水族館内で飼育しながら成長や性成熟の生理学的モニタリングを行い、種の特性に関するさらなる知見を深めます。水族館での飼育については、今後、本種の適正飼育に実績のある国外の水族館とも連携していく予定です。
グローバルな連携による将来への取り組み
今回の放流調査は、飼育技術と野外調査の両面で高い専門性を持つアメリカのジョージア水族館およびシェッド水族館との協力により進められています。沖縄美ら海水族館では、生息域内(野外)と生息域外(水族館)での研究を並行して進めることで、将来の保全に迅速かつ効果的に対応できる体制を構築していきます。
沖縄美ら海水族館は自然下での生態や生理状態を理解するため、野外研究を開始しました。 当館はこれまで本種を長期飼育し、性成熟※1や繁殖※2に関する新たな知見を得てきました。今回の研究では、野外での行動特性を詳細に調べるため、個体に行動記録計を装着し、遊泳速度や加速度、水深、水温を計測します。また、体温計を取り付けることで、冷たい深海域まで潜水するとされる本種の体温がどのように維持されるのかを直接記録することを目指しています。過去に実施したジンベエザメにおける同様の調査※3を参考に、ナンヨウマンタの行動・生理研究を通じて、本種の生態解明や保全に役立つ情報を得ることを目的としています。
過去の研究業績
※1 Nozu R, Murakumo K, Matsumoto R, Matsumoto Y, Yano N, Nakamura M, Yanagisawa M, Ueda K, Sato K. 2017. High-resolution monitoring from birth to sexual maturity of a male reef manta ray, Mobula alfredi, held in captivity for 7 years: changes in external morphology, behavior, and steroid hormones levels. BMC Zool. 2(14).
※2 Murakumo K, Matsumoto R, Tomita T, Matsumoto Y, Ueda K. 2020. The power of ultrasound: observation of nearly the entire gestation and embryonic developmental process of captive reef manta rays (Mobula alfredi). Fishery Bulletin. 118: 1–7.
※3 Nakamura I, Matsumoto R, Sato K. 2020. Body temperature stability in the whale shark, the world's largest fish. Journal of Experimental Biology. 223 (11): jeb210286.
使用された記録計
放流の様子
沖縄美ら海水族館では、オオテンジクザメの生態や自然下での生理状態をより深く理解するため、野外研究を開始しました。
本種は国内で主に八重山諸島周辺に生息することが知られていますが、その行動生態についてはよく分かっていません。この研究では、個体に体温計、心電図ロガー、行動記録計を装着します。装着した機材はタイマーにより自動で切り離され、後日、研究員により回収され、野外での行動や生理状態を記録・分析します。
沖縄美ら海水族館では,本種の飼育を通した研究※のみならず,本研究のような野外における行動・生理研究や、八重山個体群の遺伝的調査も併せて行うことにより、本種の生態解明や種の保全に寄与していきます。
※飼育研究業績
Tomita T, Murakumo K, Ueda K, Ashida H, Furuyama R. 2019. Locomotion is not a privilege after birth: Ultrasound images of viviparous shark embryos swimming from one uterus to the other. Ethology. 125: 122-126.
アオウミガメはIUCN(国際自然保護連合)のレッドデータにも掲載され、絶滅が危惧されています。沖縄美ら海水族館では、本種の保全を目的に、1994年から飼育展示を通して、繁殖や生理生態の研究を行ってきました。
特にウミガメ類の性成熟がはじまる年齢を調べることは非常に難しく、飼育下で繁殖させて確かめる方法が最も有効です。当館では1999年に水族館で生まれた雌のアオウミガメを飼育しながら、毎年、エコーによる生殖腺(卵巣)の観察や直甲長(甲羅の長さ)および体重の測定を行ってきました。その結果、飼育下での雌アオウミガメの性成熟が22‐23才、直甲長82.4-83.5 cm、体重100.4-105.0 kgで開始することが明らかとなりました。
【受賞者】河津 勲、真栄田賢、小淵貴洋、笹井隆秀、水落夏帆、
山﨑 啓、前田好美、木野将克、深田晋悟(沖縄美ら海水族館)
【題 目】原著論文「飼育アオウミガメにおける卵黄形成開始時の年齢および体サイズ」
【掲載誌】動物園水族館雑誌第65巻2号, 31–36, 2023.
沖縄美ら海水族館を管理運営する一般財団沖縄美ら島財団は、このたび、ジョージア水族館(アメリカ)、バレンシア水族館(スペイン)、モナコ海洋研究所(モナコ)とそれぞれ連携協定を締結いたしましたのでお知らせします。
【協定締結の目的】
生物多様性の保全や希少生物の域外保全、海洋環境問題への取り組みなど当財団と共通の理念と目標をもつ海外の水族館と連携し、グローバル化する課題の解決や、調査研究、教育普及、将来に向けた人材の育成など、相互交流を通して水族館運営基盤の強化を図ります。
2023年、北米カリフォルニア沖で、世界初となるホホジロザメの新生仔が目撃されました。その発見は、ホホジロザメの出産海域に謎を解く手がかりとして重要であるほか、出産後の仔ザメが「謎の白い膜」に覆われていたことにより、大きなニュースとなりました。当館の研究チームは、その体を覆っていた「白い膜」の正体を解明し、国際学術誌に論文として発表しました。
私たちの研究グループがホホジロザメの近縁種であるネズミザメの胎仔を調査したところ、この「白い膜」は、当初考えられていた“羊水の成分が胎仔の皮膚にこびりついたもの”ではなく、胎仔の皮膚そのものであることが分かりました。胎仔は、体表の鱗の外側にさらに一枚の白い表皮を持っており、その表皮は出産後ただちに剥離すると考えられます。
このような現象は、過去に調査されたことがなく、謎多きホホジロザメの繁殖生態に新たな知見を与えるものです。
【論文タイトル】Whitish film covering a newborn white shark was not intrauterine material but embryonic epithelium (ホホジロザメ新生仔を覆っていた白い膜は、羊水成分ではなく胎仔の皮膚だった)
【著者名】Taketeru Tomita, Kei Miyamoto, Masaru Nakamura, Kiyomi Murakumo, Minoru Toda, Keiichi Sato (全て財団職員)
【雑誌名】Environmental Biology of Fishes
【論文リンク】https://rdcu.be/dJhXB(閲覧のみ)
沖縄島などから採集した中深層性のヒトデを、新属新種として記載しました。
本種の属するゴカクヒトデ科は、全世界から70属160種以上が知られている巨大なグループの一つです。今回使用した標本は、当館所有の無人潜水艇(ROV)を用いて、沖縄県恩納村周辺の水深247mなどから採集したものです。ROV調査では、本種が岩礁の陰となる場所に生息する様子や、多くのゴカクヒトデ類が餌とする八放サンゴ類の近くにいる姿が確認されるなど、貴重な生態の撮影と生体採集に成功しました。
【著者名】Christopher L. Mah, 木暮 陽一, 藤田敏彦, 東地 拓生 (太字:水族館職員)
【タイトル】New Taxa and Occurrences of Mesophotic and Deep-sea Goniasteridae
(Valvatida,Asteroidea) from Okinawa and adjacent regions.
【雑誌名】Zootaxa
アオウミガメはIUCN(国際自然保護連合)のレッドデータにも掲載され、絶滅が危惧されています。沖縄美ら海水族館では、本種の保全を目的に、1994年から飼育展示を通して、繁殖や生理生態の研究を行ってきました。
特にウミガメ類の性成熟がはじまる年齢を調べることは非常に難しく、飼育下で繁殖させて確かめる方法が最も有効です。当館では1999年に水族館で生まれた雌のアオウミガメを飼育しながら、毎年、エコーによる生殖腺(卵巣)の観察や直甲長(甲羅の長さ)および体重の測定を行ってきました。その結果、飼育下での雌アオウミガメの性成熟が22‐23才、直甲長82.4-83.5 cm、体重100.4-105.0 kgで開始することが明らかとなりました。
【論文タイトル】 飼育アオウミガメにおける卵黄形成開始時の年齢および体サイズ
【著者名】 河津 勲 ・ 真栄田 賢 ・ 小淵 貴洋 ・ 笹井 隆秀 ・ 水落 夏帆 ・ 山崎 啓 ・ 前田 好美
木野 将克 ・ 深田 晋悟 (太字:財団職員)
【雑誌名】 動物園水族館雑誌
当館では希少なサメの域外保全を目的とした「サメの人工子宮装置」の開発に取り組んできました。
2021年から2022年にかけて、当館では2回目となる人工子宮装置を用いた深海ザメ「ヒレタカフジクジラ」の胎仔の育成を行いました。その結果、1回目の育成では達成できなかった「出産」後の仔ザメの安定育成に世界で初めて成功し、その成果を国際学術誌にて報告しました。
「出産」の二ヶ月前から胎仔をゆっくり海水に慣れさせたことと、「出産」後の仔ザメに消化しやすい特別食を与えたことが今回の成功につながりました。
【著者名】Taketeru Tomita, Minoru Toda, Atsushi Kaneko, Kiyomi Murakumo, Kei Miyamoto, Keiichi Sato (全て財団職員)
【タイトル】Successful delivery of viviparous lantern shark from an artificial uterus and the self-production of lantern shark luciferin
(人工子宮で育成したフジクジラの出産成功と、フジクジラ類の発光物質の自己生成)
【論文リンク】(無料)https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0291224
【雑誌】PLOS ONE
オキゴンドウは世界中の温暖な海域に広く生息し、水族館での飼育例が少ない希少な種類です。
沖縄美ら海水族館で、2017年5月23日に世界で4例目となる飼育下でのオキゴンドウの繁殖に成功しました。鯨類の出産は、母親の体内から尾びれを先にして産まれる尾位分娩が多いですが、今回は頭から産まれる「頭位分娩」での出産となりました。この頭位分娩はオキゴンドウにおいて世界で初めての事例であり、分娩時間は9時間で、初めて授乳するまでに16時間かかることなど、頭位から出産しても正常に分娩や授乳が行われることが明らかになりました。
本研究の成果は、オキゴンドウの飼育下繁殖の技術向上に貢献することが期待されます。
【著者名】Suguru Higa, Yuuta Mitani, Shunya Ikeshima, Nozomi Kobayashi, Keiichi Ueda and Isao Kawazu (全て財団職員)
【タイトル】Parturition and Nursing Events in a Cephalic Birth of a False Killer Whale (Pseudorca crassidens) in Managed Care
【雑誌】Aquatic Mammals
沖縄美ら海水族館と総合研究所のスタッフが執筆した深海生物のビジュアルブック「美ら海トワイライトゾーン 知られざる深海生物のワンダーランド」が出版されました。当財団、水族館はこれまでに800回を超える深海生物調査を実施し、920種の深海生物を発見してきました。その奇妙で美しい姿