【植物か動物か、それが問題だ。後編】

ROV(無人潜水艇)調査から戻ってきた一行( ひとつ前のお話【植物か動物か、それが問題だ】をご覧ください)
そこで採集した「植物の双葉」のような生き物の正体は解明できるのか?
 
飼育員N(以下N)「えーーー!昨日採集してきたばかりのコケムシ(?)に、か、か、か、カビが生えちゃった?!」

飼育員S(以下S)「ほんとですねぇ。なんだか体の表面がふわふわしちゃってる。あれ?そういえば昨日と比べると、なんだか背も高くなっているような??」
N「本当だ。双葉の下から伸びている、透明な根っこが成長しているような??!」

N「とにかく、なんだか只事ではない事態が起きている気がする!いったいぜんたい、どうなっているんだ!!」
飼育員H(以下H先輩)「ふむ。この感じからすると、やはりコケムシの仲間で問題なさそうだな。採集時のストレスも癒え、状態がしっかり回復してきたようだ。」
N「あ、H先輩。これって調子が良いんですか?そして“コケムシ”とはいったい?」
H先輩「うむ。コケムシと言うのは、個虫(こちゅう)が集まって群体を形成している動物なのだが、詳しくは下のパネルを読むと良いだろう。」



N「ふーん、チョコみたいな生き物なんですね。味もチョコみたいに甘かったりするのかなぁ。」
S「Nさん・・・」
N「あ、ごめんごめん。植物じゃなくて、動物ということは良く分かりました!ということはもしかして、さっきのカビみたいなものは餌を捕まえるための器官なんですね?!」
H先輩「察しが良いな、N君。その通りだ。コケムシは触手冠(しょくしゅかん)という器官を使い、潮流によって流れてくる様々な有機物を捕らえて餌にしているんだ。」

S「えー、でも動物だとすると、根っこみたいな部分は何なんですか?あれは絶対植物の特徴ですよぅ。」
H先輩「うむ。疑うのも無理はないが、実はこれも個虫なんだ。群体を支えるためだけに機能分化していて、潮流で倒れたりしても再び立ち上がる。」

H先輩「昨日と比べて背が高くなっているのは、この特別な個虫が成長したためだろう。やはり、少しでも背が高い方が、餌となる有機物を集めやすいんだろうな。」
S「なんと!少し話を聞いただけでも、かなり魅力的な生き物ですね!」
H先輩「うむ。しかし苔虫動物(こけむしどうぶつ)の仲間ということは分かっているのだが、詳しい種類は特定できていないんだ。目下のところ、知り合いのコケムシ研究者が詳細を調査してくれている。今の我々にできることは、生態に関する情報を少しでも集めることだ。小さな変化も見逃さないよう、しっかり飼育観察を行うんだよ。」
N,S(二人同時に)「はいっ!!」
 
 
水深90m付近で発見した生き物は「コケムシ」という“動物”の仲間であった。
ROVによる調査では、まだまだ不思議な生き物が多数見つかりそうである。
今後の調査からも目が離せない!!
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