国頭村漁業協同組合(以下、漁協)では、サンゴ礁の再生や保全を目的に、移植用のサンゴ苗生産や養殖を行っています。しかし、11月に発生した沖縄本島北部地区の豪雨により、サンゴ養殖場へ土砂が流入し、養殖サンゴが甚大な被害を受けました。土砂は最大で40㎝ほど堆積し、その影響で現在も養殖場周辺が濁っている状況が続いています。サンゴは、赤土などの土砂に埋まると死滅してしまう他、周辺の海水が濁った状態が長期間続くと体内の褐虫藻が光合成できずに衰弱し、死亡してしまう恐れがあります。そこで、当財団では、漁協と協働して、被害を受けた養殖サンゴを、一時的に沖縄美ら海水族館の飼育スペースへ避難し、養殖場の環境が回復した後、元に戻すことを予定しています。
砂浜に漂着しているところを発見され、体の半分が浮き、頸部が曲がり、遊泳が困難な状態だったことから水族館に緊急保護しました。
保護翌日から輸液を行いました。CT検査の結果、右肺の萎縮が判明し、これが遊泳不良や漂着の原因であることが推測されました。水槽の水位を調整することで、自発的に摂餌ができるようになり、栄養状態が改善しました。
その後、徐々に遊泳状態が改善し、保護から約3ヶ月後には完全に着底し摂餌ができるほどに回復しました。
2023年10月15日、健康状態や遊泳等の行動が回復したことを確認し、海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。
砂浜に漂着しているところを発見され、浮いてしまい潜水が困難な状態だったことから水族館に緊急保護しました。
CT検査の結果、左肺が萎縮し、体腔内にガスが貯留していました。これが遊泳不良や浮いてしまう原因と考えられました。さらに便からは寄生虫の卵が確認されました。
獣医師の診断に基づき、駆虫薬の投与と針を用いたガス抜きを行った結果、徐々に遊泳状態が改善し、保護から約20日後には完全に着底し摂餌ができるほどに回復しました。
2023年9月10日、健康状態や遊泳等の行動が回復したことを確認し、海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。
砂浜に漂着しているところを発見され、甲羅の一部が陥没し、遊泳が困難な状態だったことから水族館に緊急保護しました。
CT撮影の結果、萎縮した肺から漏れ出たガスが体腔内に溜まっている事が判明しました。甲羅の一部に亀裂があった点を踏まえると、外部からの衝撃で肺がダメージを受けたことが原因で遊泳できなくなり漂着してしまったことが推察されました。
獣医師の判断に基づき、甲羅の亀裂の悪化を防ぐためパテで固定し、体腔内に溜まったガスを、針を用いて抜く処置を行いました。その後、甲羅の亀裂が塞がるとともに肺の萎縮も改善、徐々に遊泳できるようになり、保護から約2ヶ月後には完全に着底し摂餌ができるほどに回復しました。
2023年8月11日、健康状態や遊泳等の行動が回復したことを確認し、海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。
漁港のスロープに漂着していた状態で発見され、水族館に緊急保護しました。
CT検査の結果、腸内に異物が確認されました。ビタミン剤等の点滴処置を行ったところ、硬便とともにビニールを排泄しました。
2023年5月9日、健康状態が回復したことを確認し、海洋博公園内の砂浜より放流しました。
体の左側が浮き、遊泳や潜水が困難な状態で発見され、水族館に緊急保護しました。
CT検査や血液検査の結果、腹腔内にガスが充満し、右側の肺が圧迫され萎縮していました(肺気胸)。また、感染症が原因の可能性もあったことから、抗生剤の投与と針を用いて体内のガス抜きを行いました。その後、徐々に遊泳や潜水できるようになり、保護から約1ヶ月後には着底し摂餌ができるほどに回復しました。
2023年5月2日、健康状態や遊泳等の行動が回復したことを確認し、海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。
2023年4月23日正午頃、オキゴンドウの幼獣が沖縄県浦添市の漁港内に迷い込み、出られなくなっていると連絡がありました。
水族館の飼育員が状況を確認したところ、元気に泳いでいたことから、自力で脱出する可能性が高いと考え、過度な刺激を与えないよう観察を続けました。
しかし、オキゴンドウは25日早朝になっても漁港内に留まっていました。これ以上餌が少ない漁港内にいると、衰弱してしまう可能性があります。
そこで、地元の漁業者と連携し、オキゴンドウを船で漁港の外へ誘導することを試みました。
同日8:30に誘導作戦を開始し、約3時間をかけて漁港の外へ誘導することに成功しました。
オキゴンドウは、再び漁港内に迷い込まないように、漁港から約2.5km沖合まで誘導し、外洋へと元気に泳いでいきました。
引き続き、沖縄美ら海水族館では飼育を通して得られた知見に基づき、鯨類の保護を行ってまいります。
2022年の2月4日および3月9日に海洋博公園近くの砂浜でアオウミガメが各々119および116個の卵を産卵しました。
通常、沖縄県内でのアオウミガメの産卵期は6~8月の暖かい時期です。
産卵があった2月および3月初旬は夜間の気温が15℃を下回ることが多く、自然環境下での冬季の孵化・脱出はこれまでに確認されておらず、卵内の胚は全て死亡してしまうと考えられました。
そこで、全卵を水族館に持ち帰って孵卵器に収容し、人工孵化を試みました。
保護からおよそ2か月が経過した4月3日および5月10日にそれぞれ孵化が始まり、合計64匹の仔ガメが誕生しました。すぐ海へ放流したいところですが、4月や5月は海水温が低く、孵化したばかりの仔ガメにとっては冷たすぎます。
そこで、水族館で加温飼育を行い、ひと夏を越した2022年11月8日に、海洋博公園の沖合の海域で放流を行いました。
2021年11月6日に座間味村阿嘉島の沖合の海面で、水中に潜ることができなくなっているアオウミガメが、地元のダイビングショップの方々に発見されました。
ダイビング船に引き上げられた後、フェリーざまみに搭載され、那覇市内の港に運び込まれました。
保護された個体は、甲羅の長さが94cm、体重115kgのメスでした。保護時から首が傾き、斜めに浮いた状態が続いていました。
CT検査をしたところ、肺のふくらみに左右差があった他、消化管にもガスが溜まっており、これらが斜めに浮いてしまう原因であると推察されました。
その後、消化管に滞留したガスの排泄を促進する治療や給餌量の調整、水槽の水位に変化を加えるなど、斜めに浮いた状態の矯正を図るための処置を実施しました。
処置の成果もあり、2022年8月頃には安定して沈むことができるようになり、イルカ用の深いプールでリハビリを経た後、2022年11月8日に海洋博公園の沖合の海域で放流を行いました。
衰弱した状態で浜辺に漂着
水族館に保護収容し、CT検査や生理食塩水の注射、欠損していた後肢の消毒等を行いましたが、残念ながら、翌日に死んでしまいました。
解剖を行ったところ、お腹の中から、大量の軽石やプラスチックゴミが見つかりました。軽石が直接的な死因になったかどうかは分かりません。少なくとも、そういった所見はみあたりませんでした。しかし、腸が細い仔ガメでは、軽石が腸で詰まったり、腸閉塞などの原因になる可能性もあります。
軽石が海を浮遊するかぎり、仔ガメが誤って食べてしまう可能性があります。水族館では、引き続き、軽石やゴミで苦しむウミガメを保護や治療できる態勢を強化していきます。
ウミガメは砂浜に産卵し、約2か月後に孵化します。砂から出てきた仔ガメは、すぐに海に向かい、沖合に向かって約1日間泳ぎつづけます。その後、泳ぎを止めて、浮遊生活を行うと考えられています。
今回のウミガメは沖合で浮遊生活中に、誤って軽石やプラスチックゴミを食べてしまった可能性があります。
衰弱した状態でビーチに漂着
左前肢が欠損していましたが、この傷はすでに完治していました。CT撮影や血液検査の結果、体内に多量のガスが確認されたことから、これが遊泳不良や漂着の原因であることがわかりました。
保護当初、体内のガスによって体が浮き、遊泳がうまくできないものの、保護した翌朝にはエサを食べる意欲が確認され、すぐに食べ始めました。その後、徐々にガスが排出されはじめ遊泳状態が改善していきました。
2021年6月18日に、正常な遊泳ができることを確認し、海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。
海洋博公園近くの砂浜にて、前日の夜に産卵したとみられるウミガメの産卵巣が発見されました。この砂浜では今秋に送水管の工事が予定されており、ウミガメの産卵・ふ化の時期とは工期が重ならないものの、工事の事前調査等による影響が懸念されることから、地元でウミガメの保護活動をされている方と一緒に卵を移設することとなりました。
砂浜に残された足あとから産卵巣の位置を推測し、卵を取り出した後、同じ砂浜の工事区域外にウミガメが掘ったものと同じ深さの穴を作り、卵を埋め直しました。7-8月には仔ガメがふ化し、脱出する予定です。
砂浜にて産卵後、岩礁に迷入し身動きが取れなくなった
水族館へ収容後、血液検査および淡水浴による体表の寄生虫除去を行いました。
潮が引いた岩礁を歩いたことによる腹甲の擦り傷はあったものの、血液検査の値に異常は見られませんでした。また、エコー診断の結果、卵殻卵形成の兆候が見られたことから比較的早めの放流が必要と判断し、保護からおよそ1週間経過した5月14日、再度の血液検査にて健康状態を確認した後、保護した場所近くの砂浜より放流を行いました。
2021年3月4日早朝、シワハイルカ8頭が定置網に誤って入ってしまいました。漁師の方々と連携し、溺れてしまわないように飼育員が補助しながら、イルカたちを網の外へ誘導し、全頭無事に放流することができました。
放流後の生存状態や移動情報を調査するため1頭の背ビレに衛星標識タグを装着したところ*、放流後からタグが脱落するまでの数日間に亘り、周辺海域を移動する様子を確認することができました。
*衛星標識タグの装着は、獣医師の指導の下、沖縄県の許可を得て実施しています。
衰弱した状態でビーチに漂着
血液検査とCT撮影の結果、消化管内にガスが溜まっていることがわかり、それが原因でうまく遊泳できず、砂浜に漂着したと考えられました。糞便からは寄生虫の卵も確認され、加えて細菌感染症の疑いもあったため、ビタミン剤の点滴に加え、駆虫剤や抗生剤を投与しました。
治療開始から数日で餌を食べるまでに回復しました。また、血液値や消化管内のガスも改善したことから、保護からおよそ4か月半経過した2020年6月18日に海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。
岸の近くを漂流中、地元住民によって保護
他の生物に咬まれたのか、右前肢および左後肢の一部が欠損していました。体表に大量のウミエラビル(吸血性の寄生虫)が寄生、血液検査の結果、重度の脱水と貧血症状が確認されました。淡水浴によって寄生虫を取り除くとともに、脱水などの改善のため点滴を毎日実施しました。
治療開始から6日で餌を食べるまでに回復、寄生虫も取り除かれ、血液値にも改善が見られたため、2020年6月11日に海洋博公園内の砂浜より放流を行いました。