海洋生物等の調査研究活動について

沖縄美ら海水族館では、沖縄周辺にみられる熱帯・亜熱帯性の海洋生物の多様性研究や、生理学・生態学的特性を研究することにより、自然環境の保全と持続可能な利用に寄与する活動を行っています。

 

2025年

日本で17番目のボラ科魚類に新たな標準和名「タキツボメナダ」を提唱!

 

2026/1/8

ボラ科魚類は、これまで日本から16種が報告されています。そのうちの1種であるアンピンボラPlaniliza subviridisには、形態や出現環境が異なる2タイプ(A型とB型)の存在が知られていました。本研究では、沖縄美ら島財団総合研究所に収蔵されている標本を含む国内外の標本を調査し、両タイプのより詳細な形態の違いを明らかにしました。さらに分子系統解析を行った結果、これらは単なる種内変異ではなく、形態的・遺伝的に識別可能な別種であることが判明しました。また、標準和名アンピンボラをどちらに適用すべきか検討したところ、従来A型とされていた種に対して「アンピンボラ」を適用し、従来B型とされていた種に対して、新たに「タキツボメナダ」という標準和名を提唱することとなりました。
生物に標準和名が付けられ、形態による同定方法が確立されることは、研究や保全を進める上で極めて重要です。アンピンボラは環境省レッドリストで情報不足(DD)とされていますが、選定時の情報にはタキツボメナダが含まれていた可能性があります。本研究で両種の識別方法が明確になったことにより、今後はそれぞれの正確な分布や生態が解明され、より実効性のある保全策の検討が期待されます。

【著者名】福地伊芙映、佐伯智史、畑 晴陵、今井秀行、立原一憲(太字財団職員)
【題名】日本から得られたボラ科Planiliza cf. subviridis type A sensu Yoshigou (2022) アンピンボラと P. cf. subviridis type B sensu Yoshigou (2022) タキツボメナダ(新称)の分布記録ならびに形態に関する知見
【雑誌名】Ichthy, Natural History of Fishes of Japan
【論文リンク】https://doi.org/10.34583/ichthy.62.0_1

オキゴンドウの精液性状およびテストステロン濃度に関する飼育研究がMammal Study誌に掲載されました!

 

2025/12/13

オキゴンドウ(Pseudorca crassidens)は温帯から熱帯の外洋に生息するクジラの仲間で、近年では一部の地域個体群において個体数の減少が報告されており、国際自然保護連合(IUCN)では準絶滅危惧(Near Threatened)に分類されています。
本研究では、当館で長期飼育されている1頭のオス個体を対象に、精液性状(精子濃度、運動率、生存率)および血清中のテストステロン濃度の季節変化を調査しました。その結果、射精回数が進むにつれて精液性状が向上する傾向があり、特に4回目・5回目の精液が人工授精に適した高品質な精液であることがわかりました。また、精液性状とテストステロン濃度の変化から、精液性状の向上がテストステロン濃度のピークから遅れて起こる可能性が示唆されました。
本研究の結果は、オキゴンドウにおける人工授精の実施に向けた基礎的知見を提供するものであり、今後の飼育繁殖技術の発展や種の保存に寄与することが期待されます。 沖縄美ら海水族館を運営する一般財団法人 沖縄美ら島財団では、今後も鯨類の繁殖生理に関する研究を推進し、飼育下での繁殖技術の確立と保全に向けた取り組みを進めてまいります。

【著者名】比嘉 克、小俣万里子、仲村美里、小林希美、植田啓一、河津 勲(すべて財団職員)
【題名】Long-term monitoring of semen quality and serum testosterone concentration in a male false killer whale in managed care
【雑誌名】Mammal Study
【論文リンク】https://doi.org/10.3106/ms2022-0004

複数のカメラを使ってジンベエザメの体長をより正確に測定できるようになりました!

2025/12/7

ジンベエザメのような大型海洋動物は動きを止めることができないため、体に触れずに体長を測る必要があります。しかし、泳いでいる状態で正確な体長を測るのはこれまでに難しい課題でした。
そこで本研究では、複数のカメラ映像をもとに三次元座標を推定する「マルチステレオ画像計測」という技術を使い、いおワールドかごしま水族館で飼育されていた個体(実測尾叉長 379 cm)を対象に、遊泳中の体長をどれほど正確に推定できるかを検証しました。
解析では、2台・3台・4台のカメラ構成を比較した結果、2台構成では平均437 cm(±46 cm)と推定値のばらつきが大きかったのに対し、3台構成では402 cm(±17 cm)、4台構成では411 cm(±18 cm)となり、3台以上の構成で誤差が大幅に小さくなることが示されました。また、カメラから離れるほど誤差は増加する傾向がありましたが、3台および4台構成ではその増加が抑えられ、離れた位置でも比較的安定した精度で測定できることがわかりました。
現在、沖縄美ら海水族館でもこの技術やさらなる技術開発を進めており、ジンベエザメをはじめ、体長測定が難しい魚類の成長や健康状態の把握に役立つことが期待されます。
 

 
【著者名】Hiroto Yamamoto , Akira Sasaki , Tomoki Kanna , Yasushi Mitsunaga and Shinsuke Torisawa (太字財団職員)
【タイトル】Estimating Whale Shark, Rhincodon typus, Length Using Multi-Stereo-Image Measurement
【雑 誌】Fishes 
【論文リンク】 https://doi.org/10.3390/fishes10100513

アカウミガメ幼体の初期餌料に関する論文が掲載されました

アカウミガメ孵化幼体

2025/11/19

本研究では、孵化後1年未満のアカウミガメ Caretta caretta 幼体における死亡率の低減や、真菌による皮膚疾患をはじめとした日和見感染症などの疾病予防を目的に、複数の餌料を用いた飼育試験を行いました。 その結果、スッポン用配合飼料とミンチ(ゴマサバとヤリイカ類を1:1で混合)を1:4の割合で混合した餌料(マッシュミンチ)を給餌した個体では、初期死亡や真菌発症が軽減される効果が認められ、さらに高い成長率と嗜好性も確認されました。また、栄養分析の結果、本餌料は成長や免疫機能に関与するカルシウム、鉄、亜鉛、マンガン、ビタミンB₂、D₃およびEを多く含むことがわかりました。 
本研究の成果は、アカウミガメ幼体の健康管理や飼育環境の改善に資するものと期待されます。

【著者名】前田好美、木野将克、笹井隆秀、河津 勲(すべて財団職員)
【タイトル】アカウミガメ幼体の適正初期餌料の検討
【雑 誌】動物園水族館雑誌67巻2号

サンゴの日中産卵展示に関する論文が掲載されました

コエダミドリイシ 日中産卵の様子

2025/11/13

沖縄美ら海水族館では、水槽の照明環境を調整することでサンゴの産卵時間をコントロールする技術を2020年に開発、翌年から日中に産卵するサンゴを展示することに成功しました。2024年には日中に水槽で生まれたサンゴが、親となり、再度日中の産卵に成功しました。これらの成果は、サンゴの産卵生態の解明に貢献するとともに、自然環境への負荷を抑えた生態展示の実現にもつながっています。

【著 者 名】永田 史彦、松崎 章平、松本 瑠偉(すべて財団職員)
【タイトル】明暗処理によるコエダミドリイシの産卵時刻の調整と産卵の展示
【雑  誌】動物園水族館雑誌66巻4号
 

アオザメはなぜ冷たい深海と温かい海面を自在に行き来できるのか ― 並外れた体温調節能力を実証

行動記録計を取り付けたアオザメ。©Zola Chen


記録計から明らかとなったアオザメの特殊な体温変化。暖かい海面に浮上して体温をすばやく回復させた後、さらに体温を上げてから冷たい深海へ潜っていることがわかる。

2025/10/14

マグロやカジキ、そして一部のサメ(ホホジロザメやアオザメなど)は、周囲の水温より高い体温を維持できる「部分的内温性」という特徴を持っています。これまで、この能力は主に冷たい海域での適応として説明されてきましたが、温暖な海を好むアオザメにとっての意義は不明でした。
本研究では、台湾南東部沖合で野生のアオザメに行動記録計を装着し、体温・水温・潜水深度を測定しました。その結果、冷たい深海で体温はゆっくり低下する一方、温かい海面では急速に上昇することが分かりました。体温の上昇速度は低下速度の10倍以上に達し、魚類ではメバチやメカジキに匹敵する値でした。この能力により、アオザメは獲物が豊富な深海に長く滞在しつつ、効率的に体温を回復しながら捕食活動を行っていると考えられます。
さらに一部の個体では、深海潜水前に海面で体温を周囲より高くまで上げる「潜水前の準備」ともいえる行動も観察されました。これは魚類では前例のない発見であり、体温調節の柔軟性と意思決定的な行動の存在を示唆します。
本成果は、温暖な海域に生息する種においても部分的内温性が大きな適応的意義を持つことを示しました。この発見は、部分的内温性を持つ魚類が世界中の外洋域で繁栄した背景を理解する上で重要な手がかりとなります。

【著者名】徳永 壮真(総合研究大学院大学)、Wei-Chuan Chiang(台湾農業部水産試験所)、中村 乙水(長崎大学)、松本 瑠偉(沖縄美ら島財団)、渡辺 佑基(総合研究大学院大学)
Soma Tokunaga*1, Wei-Chuan Chiang*2, Itsumi Nakamura*3, Rui Matsumoto, Yuuki Y. Watanabe*1
*1 SOKENDAI
*2 Taiwan Fisheries Research Institute
*3 Nagasaki University

【論文名】 Enhanced thermoregulation abilities of shortfin mako sharks as the key adaptive significance of regional endothermy in fishes
【雑誌名】 Journal of Animal Ecology
​​​​【論文リンク】 https://doi.org/10.1111/1365-2656.70116

 

日本初記録の「スカシハゼ」「クガニウミタケハゼ」を発見!和名を提唱しました

スカシハゼ

クガニウミタケハゼ

2025/10/14


2019年以降のROVによる深海生物相調査(水深95–110 m)で採集されたハゼ科魚類を精査したところ、日本からこれまで記録のなかった「Lobulogobius omanensis(ロブロゴビウス・オマネンシス)」と「Pleurosicya annandalei(プレウロシキア・アナンダレイ)」であることがわかりました。これらのハゼは、ROVによって海洋無脊椎動物と共に採集されました。日本語での識別と普及を目的として和名「スカシハゼ」と「クガニウミタケハゼ」を提唱しました。また、これら2種は深海性であることから、これまで生きて採集されたことはなく、本研究で生きているときの色彩が明らかになり、ROVの映像によって両種とも砂地に生息する無脊椎動物の上や中に生息している様子が確認されました。


【著者名】Nozomi Hanahara, Takuo Higashiji, Haruka Sugimoto, Jo Okamoto, Hiromi Morota, and Reika Soeya(すべて財団職員)
【タイトル】First Japanese Records of Two Commensal Gobies, Lobulogobius omanensis and Pleurosicya annandalei (Teleostei: Gobiidae), Collected Using Remotely Operated Vehicle
【雑誌】Species Diversity
【論文リンク】https://doi.org/10.12782/specdiv.30.155

ホシザメの深海域での行動を追跡
~最新技術で解き明かすサメの生態と保全への挑戦~

2025/8/22 

ホシザメは日本沿岸に広く分布していますが、沖縄では水深200~400mの深海域に生息しており、その行動や生態はほとんど明らかになっていません。沖縄美ら海水族館では、ホシザメの生態や自然下における生理学的状態をより深く理解するため、長崎大学と共同で野外調査を実施しました。
今回の調査では、深度や周囲の水温、心拍数を記録する小型の装置をホシザメに装着して放流しました。この装置はタイマーにより自動的に体から外れ、海面に浮上します。研究員がそれを回収し、野外での行動や生理データを分析します。その結果、夜間と昼間で異なる深度に滞在する傾向や、水温の変化に伴い心拍数が約25bpmから約55bpmまで変動することが明らかとなりました。
沖縄美ら海水族館では、飼育下での研究に加え、このような野外での行動・生理学的研究にも取り組んでいます。これらの成果は、本種の生態解明だけでなく、将来的な種の保全や再導入につながる重要な知見となります。

  • ホシザメに使用した小型装置

  • 放流直後のホシザメの様子

  • 放流直後のホシザメの様子(水中)

ウミヘビ属(コブラ科)の種分化に関する研究がEcology and Evolution誌に掲載されました!

2021年に沖縄島近海で確認されたヨウリンウミヘビ

2025/8/17

地理的な障壁が少ない外洋での生物の種分化メカニズムは長らく謎とされてきました。本研究では、多くの種を擁するウミヘビ属のうち16個体(14種)を対象に、全ゲノム解析を実施し、その進化史と種分化の過程を調べました。
その結果、ウミヘビ属の多くの種は約100万年前という比較的最近の時期に、ほぼ同時に急速な種分化が起きていたこと、種分化後は種間の交雑がほとんど見られず、厳格な繁殖的隔離が保たれていることが明らかになりました。
また、2021年に沖縄島近海で採集され、日本初記録として報告されたヨウリンウミヘビについては、同種のオーストラリア産個体と比較して遺伝的多様性が著しく低く、新しく派生した非常に小さな個体群に属する可能性などが示唆されました。
本研究は、日本大学生物資源科学部(岸田拓士教授)を中心とする研究チームに協力する形で行われました。

詳しくは、下記の論文をご覧ください。

著者名: Takushi Kishida, Rina Keboushi, Takahide Sasai, Mamoru Toda(太字:財団職員)
論文題名: Genomics Reveals Recent Rapid Speciation of Sea Snakes of the Genus Hydrophis (Reptilia, Squamata, Elapidae)
雑誌名: Ecology and Evolution
論文リンク: https://doi.org/10.1002/ece3.71627

潮汐変化が環境DNAメタバーコーディングに与える影響を評価しました

2025/8/11

近年、生物多様性の評価手法として「環境DNAメタバーコーディング」が注目を集めています。水中の生物は、排せつ物、粘液、皮膚片などを通じて微量のDNAを環境中に放出しており、このDNAを水から抽出・解析することで、生息する生物種を特定することができます。特に、環境DNAメタバーコーディングは、DNAの特定の領域を増幅し、次世代シーケンサーを用いて解析することで、短時間で多数の生物種を網羅的に検出できる点が大きな特徴です。この手法は、従来の潜水調査や捕獲調査と比べて、非侵襲的かつ効率的に生物群集を把握できるため、海洋生態系の研究や生物多様性のモニタリングに広く活用されています。
しかし、海岸域では潮汐の影響によって水の流れが刻々と変化するため、環境DNAがどのように分布し、調査結果に影響を与えるのかは十分に理解されていませんでした。潮の満ち引きによってDNAが拡散・希釈される可能性があり、これが魚類群集の正確な検出にどの程度影響を及ぼすのかを明らかにすることが、本研究の目的でした。
今回、千葉県房総半島(温帯)と沖縄県本部半島(熱帯)の2つの地域において、異なる潮位のタイミングで水を採取し、DNA解析を実施しました。これにより、潮汐が魚類群集のDNAサンプルに与える影響を定量的に評価しました。その結果、潮汐による影響は一定程度認められたものの、他の要因と比較するとその影響は限定的であることが明らかになりました。このことから、環境DNAを用いた魚類群集の調査では、潮汐を過度に考慮する必要がない場合が多いことが示唆されます。
本研究の成果は、環境DNAを活用した調査手法のさらなる改良に寄与するとともに、より精度の高い生物多様性モニタリングの実現に貢献するものです。また、将来的には、異なる環境条件下でのeDNAの動態をより詳細に把握し、調査デザインの最適化を進めることが求められます。

【著者名】 岡慎一郎、宮正樹、佐土哲也、潮雅之(太字:財団職員)
【タイトル】Assessing the impact of tidal changes on fish environmental DNA metabarcoding in temperate and tropical coastal regions of Japan
【雑誌】Metabarcoding and Metagenomics
【論文リンク(どなたでも無料でご覧になれます)】 https://doi.org/10.3897/mbmg.8.135461
 

第8回 「沖縄お魚ゼミ」を開催しました!

全体集合写真


研究発表の様子

2025/8/11

2025年3月8日、琉球大学にて第8回沖縄お魚ゼミを主催しました。沖縄お魚ゼミは、琉球列島で魚類の研究に携わる研究者や学生が、最新の研究成果を発表し、情報交換を行うことを目的として毎年開催されています。
今年は、沖縄県および鹿児島県から約30名の参加者が集まり、琉球列島周辺の海域に生息する魚類を対象とした分類学的および生態学的な研究成果が発表されました。琉球列島における魚類研究のさらなる発展が期待される、有意義な交流の場となりました。

日本初記録のクラゲ「チリメンクラゲ」を発見・命名しました!

チリメンクラゲ Versuriga anadyomene


チリメンクラゲ(水槽内)

2025/7/29

2022年に沖縄県読谷沖で採集したクラゲの標本を分類学的に精査したところ、鉢クラゲ綱の日本初記録種Versuriga anadyomene(ベルスリガ・アナディオメネ)であることがわかりました。本種は、美しい色彩をもち、傘の表面に特徴的な網状組織がみられます。これらが日本の伝統的な織物である縮緬(ちりめん)に似ていることから、標準和名 「チリメンクラゲ」を提唱しました。 これまで、東南アジアやオーストラリア、パラオなどで報告がありましたが、本研究により日本近海(沖縄)にも出現することが明らかになりました。また、Versurigidae科Versuriga属のクラゲとしても日本初記録となりました(日本初記録科・日本初記録属)。科と属の和名もそれぞれ、チリメンクラゲ科、チリメンクラゲ属としました。 本研究は、沖縄美ら海水族館と公益財団法人黒潮生物研究所の共同で行われました。


【著者名】Sho Toshino, Miyako Tanimoto(太字:財団職員)
【タイトル】First Japanese record of Versuriga anadyomene (Scyphozoa: Rhizostomeae) from the Ryukyu Archipelago
「琉球列島から見つかった日本初記録のVersuriga anadyomene
【雑誌】Biogeography
【論文リンク】 https://doi.org/10.11358/biogeo.27.86
 

日本に生息するほぼすべてのサンゴを「水一杯」で読み解くことが可能に!

 

 


 

 2025/6/17

 サンゴ礁を支えるイシサンゴの仲間は、気候変動や人間活動により危機的な状況にあり、今後の保護には各地域での現状把握が必要です。これまでのサンゴ調査では、専門技術を要するダイバーや水中映像技術を要してきましたが、効率や制度の面でその有効範囲には限界がありました。
 一方で環境DNAメタバーコーディング(eDNA-M)は、サンゴの存在を検出するための有効な方法ですが、PCRで増幅するための最適化されたプライマーと、解析に必要な完全なゲノム情報が不足していました。日本のサンゴ礁に生息する85属のイシサンゴの仲間のうち、不足していた22のサンゴ属のミトコンドリアゲノムをシーケンシングし、さらに12属の種も再シーケンシングをしました。
 美ら島財団ではこのうちの7属の新データの取得に貢献しました。これらのデータを用いて新たなeDNA-Mシステムを構築し、85属中83属を検出できるようにしました。これにより、日本の海域でイシサンゴの仲間の属レベルでの包括的な検出がコップ一杯の水で可能になりました。本研究は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のマリンゲノミックスユニット(佐藤矩行教授)を中心とする研究チームに協力する形で行われました。

【著者名】
Kanako Hisata, Tomofumi Nagata, Megumi Kanai, Frederic Sinniger, Fumihiko Nagata,
Mayuki Suwa1,Yuki Yoshioka1, Saki Harii, Masanori Nonaka, Hironobu Fukami, Seiji Arakaki,
Manabu Fujie, Nana Arakaki, Yuna Zayasu1, Haruhi Narisoko, Takeshi Noda1, Aya Koseki,
Koki Nishitsuji1, Jun Inoue, Chuya Shinzato, and Noriyuki Satoh
(太字:財団職員)

【論文題名】 An eDNA metabarcoding system for detecting scleractinian corals to the generic level along the Japanese coast
【雑誌名】Galaxea, Journal of Coral Reef Studies
【掲載日】2025年5月22日
【論文リンク】
https://www.oist.jp/ja/news-center/news/2025/5/22/discovering-rich-biodiversity-coral-reefs-using-comprehensive-new-system 

水族館職員による論文が、公益社団法人日本動物園水族館協会、2025年度技術表彰を受賞しました!

 

 


卵発生から成長

2025/6/10

ハタゴイソギンチャクを含む宿主イソギンチャクはクマノミ類と共に観賞用として需要が高く,捕獲による生息密度の減少が指摘されています。クマノミ類の繁殖技術が1970~1980年代に確立されている一方で,宿主イソギンチャクの繁殖技術は確立されておらず,繁殖生態に関する知見も極めて少ない状況でした。
沖縄美ら海水族館ではハタゴイソギンチャクの保全を目的として、2019~2022年に繁殖技術の開発と繁殖生態の解明について研究を行ってきました。穿刺針を用いて雌雄を判別し、屋外に設置した水槽で雌雄混合飼育を行ったところ,受精卵の採取と繁殖行動の撮影に成功しました。本種の繁殖は6~7月(水温26.1~27.2℃),満月の6~9日後に行われ,日没約1時間前に放精,日没後に産卵することが明らかとなりました。
また,同様の方法で2023年にシライトイソギンチャク,2024年にアラビアハタゴイソギンチャクの飼育下繁殖に成功しており,本技術が宿主イソギンチャク類の生息域外保全に貢献するものと期待しています。

【受賞者】松﨑章平、鈴村真由、谷本 都、小俣万里子、中島愛理、村雲清美(沖縄美ら海水族館)
【題 目】原著論文「ハタゴイソギンチャクの雌雄判別方法および飼育下繁殖」
【掲載誌】動物園水族館雑誌66巻3号,57-66,2024.

 

沖縄島近海のクロウミガメにおける人工物摂食状況に関する論文が掲載されました!

 

1個体のクロウミガメから排出された人工物(下線部の長さは50 mm)

2025/5/17

海洋に流出した人工物は,多くの海洋動物に影響を与え,世界的な問題となっています。ウミガメ類における人工物の摂食は、生存や成長に悪影響があることが示されており、沖縄島近海の状況を明らかにすることは,ウミガメの保全活動を行う上で重要です。
1999年から2023年にかけて沖縄島近海で発見された5個体のクロウミガメを対象に、西部太平洋地域で初めてとなる人工物摂食状況の調査を行いました。生きた状態で発見された3個体は沖縄美ら海水族館で飼育し、2〜72日後に軟質プラスチックやその他の人工物を排出しました。残りの2個体は死亡漂着個体であり、解剖により消化管内容物を調査した結果、1個体からのみ人工物が検出されました。全体としては5個体中4個体(80%)で人工物の摂食が確認され、同海域に生息する他種のウミガメと比べて高い割合であることが明らかとなりました。
本研究から、沖縄島近海のクロウミガメは人工物の摂食率が高く,その人工物が長期にわたり消化管内に滞留することで健康状態が悪化することが懸念されました。そのため、沖縄島周辺で発見されたクロウミガメに対しては積極的な緊急保護を行い、薬剤や内視鏡を用いた速やかな人工物除去が必要であると考えられました。


【著者名】笹井隆秀・山崎啓・真栄田賢・水落夏帆・木野将克・河津勲(すべて財団職員)
【論文題名】沖縄島近海のクロウミガメChelonia agassiziiにおける人工物の摂食状況
【雑誌名】うみがめニュースレター
詳しくはコチラ(論文リンク)

 

ジンベエザメの遊泳行動に関する研究がFishery Bulletin誌で掲載されました!

 

ジンベエザメ

2025/4/5

ジンベエザメ (Rhincodon typus) は成長や成熟に長い時間を要するため、繁殖や保全に関する研究には長期的な観察が不可欠です。そのため、環境要因が行動に与える影響を理解し、適切な飼育管理を行うことは重要です。本研究では、沖縄美ら海水族館で29年以上飼育されている雄のジンベエザメにデータロガーを装着し、水温や光が遊泳行動に与える影響を調べました。
遊泳データの結果から、すべての季節において尾鰭振動数、遊泳速度、活動レベルは夜間に日中よりも4%~20%低下し、特に水温が23.6℃以下の低温時には、夜間の活動が約20%減少する傾向がありました。また、一般的に雄のサメに見られる繁殖行動の一つ「クラスパークロス(生殖器を交差させる行動)」の約90%が日中に確認されました。
これらの結果から、ジンベエザメは日中に活発に行動する一方、夜は尾鰭の振りを遅くしてエネルギーを節約しながら休息する昼行性のリズムをもち、現在の飼育環境に適応していると考えられます。
本研究の成果は、ジンベエザメの行動特性の理解を深め、今後の飼育管理や保全活動に役立つと期待されます。


著者名:
Tomoki Kanna, Sayaka Takahashi, Eundeok Byun , Atsushi Yamashiro , Rui Matsumoto , Shinsuke Torisawa , Yasushi Mitsunaga (太字:財団職員)

論文題名:
Seasonal behavioral changes of a captive whale shark (Rhincodon typus) under variable temperature and light conditions

雑誌名: Fishery Bulletin

 

タイマイのセレン濃度に関する飼育研究がCurrent Herpetology誌に掲載されました!

 

タイマイ

セレンは海洋環境に自然に存在する微量元素です。卵生(卵を産む)動物では、血中のセレン濃度が低下すると、孵化率の低下リスクがあることが知られています。本研究では、絶滅危惧種であるタイマイ(Eretmochelys imbricata)の野生個体と飼育個体45頭の血清セレン濃度を比較し、飼育期間中の血清セレン濃度の変化をモニタリングしました。その結果、野生のタイマイは飼育個体に比べて血清セレン濃度が有意に高いことが明らかになりました。この低下は特に飼育開始後1~2年の間に顕著に見られ、飼育下での孵化率の低下につながる可能性があることを示唆しています。
沖縄美ら海水族館を運営する沖縄美ら島財団は、今後も保全研究を推進し、この課題の解決に向けた取り組みを進めていきます。

著者名:
Kino Masakatsu, Isao Kawazu, Konomi Maeda (全員財団職員)

論文題名:
Relationship between Serum Selenium Concentration and Rearing Period in Hawksbill Turtles

雑誌名: Current Herpetology

 

エラブウミヘビの肺に寄生する吸虫の分類再検討に関する論文が掲載されました。

エラブウミヘビの肺に寄生する吸虫Pulmovermis cyanovitellosusは、1960年に台湾で発見され、その後日本や韓国でも記録されてきました。特異な生態をしているウミヘビを宿主としている本種は、これまで特異なグループに分類されていましたが、遺伝子配列に基づく分子系統学的研究と形態学的研究の結果、実は別のグループ(Lecithochirium属)に属することが明らかになりました。この発見により、本種は新たにLecithochirium cyanovitellosumとして分類群を統合することが提案されました。

 

                                                                Lecithochirium cyanovitellosumの全身(左側面)

 
著者名:
Misako Urabe, Takahide Sasai, Sergey G. Sokolov (太字:財団職員)
論文題名:
Rejection of the concept of hemiurid genus Pulmovermis (Digenea: Hemiuridae) and other taxonomic propositions: new morphological and molecular data regarding Lecithochirium cyanovitellosum (Coil and Kuntz, 1960) Urabe and Sokolov, comb. nov. (formerly Pulmovermis cyanovitellosus)

雑誌名: Systematic Parasitology
論文リンク: 10.1007/s11230-025-10213-3  
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