【ご報告】ミナミバンドウイルカ「サミ」について

ミナミバンドウイルカ「サミ」について、2025年6月5日に死亡が確認されました。

ミナミバンドウイルカ「サミ」について

■愛称： サミ
■性別： メス
■年齢： 26歳
■死亡年月日： 2025年6月5日（木）
 

ミナミバンドウイルカは温暖な海域の沿岸部に生息し、日本近海では奄美大島などで見られる種類で、小柄で腹部に斑点模様があるのが特徴です。
「サミ」はミナミバンドウイルカにおいて、国内唯一の繁殖に成功した（１年以上生存）個体です。
一般公募により九州・沖縄サミットにちなんで「サミ（沙美）」と名付けられ、母親の「オキちゃん」とともにイルカショーなどで活躍し、多くの方々から愛されてきました。
2020年には本部町の成人式がオキちゃん劇場で執り行われ、20歳を迎えた「サミ」も新成人と一緒に祝福される等、地域の皆様にも親しまれていました。
また、この年には尾びれを失う大けがを負い、遊泳能力と他のイルカとの関係性を一時的に失いましたが、スタッフと一緒にリハビリを行い尾びれ無しでも泳ぐ力を取り戻し、同時に仲間と行動をともにする社会性も回復していました。
そういった中、2025年１月に以前より患っていた肺炎が再発し悪化したため、様々な医療処置、栄養管理の徹底、精神的安定性を確保する環境の調整など、原因究明と回復に向けた多角的なケアを行ってきました。
しかし、６月５日の早朝に状態が急変し、その後死亡が確認されました。詳細な死因は病理検査などの今後の検証で明らかとなりますが、現在のところ肺疾患が主な要因である可能性が高いと考えています。

「サミ」は国内唯一のミナミバンドウイルカ繁殖個体として繁殖生態の乏しい本種の生態解明に大きく貢献するだけでなく、獣医学に関連した多くの知見を残してくれました。
これらの知見は、今後の鯨類の繁殖や健康管理技術の向上に寄与することが期待されます。
 

サミが関連した論文一覧

Jun Tamura, Makio Yanagisawa, Yusuke Endo, Keiichi Ueda, Haruka Koga, Yasuharu Izumisawa, and Kazuto Yamashita. (2017) Anesthetic Management of an Indo-Pacific Bottlenose dolphin (Tursiops aduncus) Requiring Surgical debridement of a Tail Abscess. Journal of Zoo and Wildlife Medicine 48(1):200-203

Shumoto G, Nagashima LA, Nakagawa Itano E, Minakawa T, Ueda K, Sano A. 2019. Immunohistochemical Cross-Reactivity Between Arthrographis kalrae and Highly Pathogenic Coccidioides posadasii, Histoplasma capsulatum, and Paracoccidioides Fungal Species. Mycopathologia 184:393–402.

Shumoto G, Ueda K, Yamaguchi S, Kaneshima T, Konno T, Terashima Y, Yamamoto A, Nagashima LA, Itano EN, Sano A. 2018. Immunohistochemical Cross-Reactivity Between Paracoccidioides sp. from Dolphins and Histoplasma capsulatum(Article). Mycopathologia,183 (5) :793-803.

Kanegae H, Suguiura MI, Sasaki K, Ootsuka M, Hamano T, Ono MA, Itano EN, Ueda K, Sano A. Latent cases of paracoccidioidomycosis ceti diagnosed by the combination of polymerase chain reactions and loop mediated isothermal amplification (PCR-LAMP). J Zoo Wildl Med. 2021;26:103–11.

Takahashi H, Ueda K, Itano-Nakagawa E, Yanagisawa M, Murata Y, Murata M, Yaguchi T, Murakami M, Kamei K, Inomata T, Miyahara H, Sano A, Uchida S. 2010. Candida albicans and C. tropicalis Isolates from the Expired Breathes of Captive Dolphins and Their Environments in an Aquarium. Veterinary Medicine International. 2010:1–12. (http://dx.doi.org/10.4061/2010/349364).

Minakawa T, Shumoto G, Kezuka C, Izawa T, Sasaki K, Yamaguchi S, Kamezaki N, Yamate J, Konno T, Sano A, Nakagawa Itano E, Wada S, Willson C, Ueda K. 2020. Seroprevalence of Antibodies Against Paracoccidioides Spp. in Captive Dolphins from Three Aquaria in Japan. Mycopathologia 185:1013–1020.