この度、日本動物学会の学術誌「Zoological Science」に掲載されたチュラウミカワリギンチャクの新種記載論文 が「2020年度Zoological Science Award」を受賞しましたのでお知らせいたします。
Zoological Science Awardは、年度内のZoological Scienceに掲載された論文のうち、特に優れた研究に対して贈られるものです。受賞論文は、当館職員と東京大学大学院の泉貴人氏、鹿児島大学国際島嶼教育研究センターの藤井琢磨博士、千葉県立中央博物館分館海の博物館の柳研介博士、国立科学博物館の藤田敏彦博士らによる共同研究で、2019年12月に公表されました。
以下、日本動物学会からの受賞コメント
ヤツバカワリギンチャク科のSynactinernus 属は、1918 年の原記載論文のみしか採集報告がないクローバーカワリギンチャク1 種から構成される属で、近年は近縁であるIsactinernus 属の新参異名で無効とする論文もあり、属の有効性も確定していない状況であった。
本論文は、Synactinernus 属のイソギンチャクについて,西日本各地で採集された標本が同属のものであることを見いだし、形態学・分子系統学的解析を行った結果として新種チュラウミカワリギンチャクを記載した上で、同属の分類学的地位を確定させた。さらに、飼育記録などを元にヤツバカワリギンチャク科において初めて横分体形成を確認するなど、生態的特性の理解にも貢献した。Synactinernus 属の再記載に用いられた標本は,主に沖縄美ら海水族館で未同定種として飼育されていた個体であり、1世紀にわたって採集報告がなく謎となっていた属の確定が、水族館と研究者の連携によって達成されたことも注目に値する。
※受賞論文中で新種記載したチュラウミカワリギンチャクは、沖縄美ら海水族館1階、「深海の旅エリア」にて展示しています 。
※生物の状況により展示を終了することがあります。